「英国D&AD賞、受賞作/審査員から見たデザイン審査の現場」を聴講
2024年 12月 23日
JAGDA国際セミナー「英国D&AD賞、受賞作/審査員から見たデザイン審査の現場」を会場で聴講。D&AD賞関連のイベントは、久しぶりに参加。前回は確か、コロナ前。参加できて嬉しいなぁ。
今回のゲストは、2016年に審査員を務めた木住野彰悟さんと、2022年に審査員を務めた丸山 新さんのお二人に加えて、D&AD日本事務局の古屋言子さん。木住野さんと丸山さんは、ご自身が手がけたプロジェクトをご紹介してくださったのですが、これがまぁ素晴らしい。木住野さんは、不二家のリブランディング。丸山さんはTokyo Dome City全体のタイポグラフィを活用したデザインシステムの構築。伸縮するVariable Typefaceとか、思いつくのはできるかもしれないけど、それを形にして実現するのはすごすぎる。お二人とも共通してるのは、最初の依頼は比較的細かいロゴ周りのデザインとかサイネージの制作だったりしたものが、提案をしていく中でブランディング全体を一気通貫するデザインシステムの構築にまで持っていったこと。もちろんそこには、たまたまタイミングがよくてそのための予算が集まったと言うこともあるのでしょうが、そこまで本質的なプロジェクトにもっていったのはすごいな、と。
日本と欧米のデザインに関する、特にブランディングにおけるデザインシステム構築に関する考え方の違いというのも面白かった。
デザインとアートの違いって、よく考えるのですけど。
アートは、正解がない。むしろ、正解から遠いところにある個人的な表現活動が「作品」と呼ばれる。「自分が正解」というような。
デザインの場合は、明確に「正解」が存在する。その正解に近い形に造形なりビジュアルなりを近づけていく作業。使いやすい形、操作しやすいボタン、そして、その環境になじんでいること。素材も、つくりかたも、流通の仕方もベストに近づけていくこと。最適解と言い換えても良いけど。みんながハッピーになることを目指して、その正解に近づけていく。
私は、学生時代は完全にアートの人でした。卒業して、商業デザインの世界に入って、そこからアートとデザインのハイブリッドに。制作者であり、プロデューサーとして立ち位置でも仕事をする。だからこそ、見えてきたものがあったりもする。どちらが良い、どちらが優れているというのではなく、それぞれの違いがあって、それが世の中の受け入れられ方の違いになっている、と。
最近の企業ロゴやブランドデザインが「Helvetica(ヘルベチカ)化」しているという。それは、昔のデザインやブランドイメージを愛する人にとっては、均一化されて面白みのないデザインに見えるかもしれない。でも、昨今のメディアやデバイスの変遷で、小さなスマホ画面でもそのブランドのロゴが見やすいという意味ではひげ無し文字の安定感は絶対だし、かつインクルーシブなデザインが求められる現代では、より多くの人が見やすいデザインであったりロゴであったりが必須ということ。必然的に、デザインがわかりやすくシンプルなものになっていくけれど、それは世の中の変遷であったり、この時代の正解というのがそういうところにあるから。
改めて、デザインというものについて考えることができた、よいトークイベントでした。ご招待いただき、ありがとうございます。
by t0maki
| 2024-12-23 21:41
|
Comments(0)