今日という1日

今日の日の出来事は、たぶん一生忘れない。

帰りのロケバスの中で、この時間がずっと続けば良いのにと思った。

黒スーツの名残が、かろうじて革靴にだけ残ってる。あれだな、シンデレラの、ガラスの靴のようなものか。あとは、フッと消えてしまった。

ロサンゼルスに住んでいた頃、街中で突然現れる映画やドラマのロケ現場が眩しかった。東京に住むようになっても、ロケバスや撮影現場はついつい気になる。気になるから、気にならないフリをして、怒ったように足早に通り過ぎる、と。

「映画に出たいな」と思って、昨年の夏の終わりにエキストラの事務所に登録してみた。年末特番の黒スーツの役でエキストラをやったあと、本当に映画の撮影現場に参加することができた。願いは叶った。それで、この夢のことは終わりにして、次に進もうと決意した。……はずだったのだが、どうしても参加してみたい案件を知って、思わず応募してしまった。運良く選ばれ、本日の撮影。

自分の年齢の半分以下の主役の女の子を目の前にして、あまりのオーラに完璧にあがってしまった。なんだろね。自分には眩し過ぎる。

撮影のスタッフが、かっこよかったな。みんな、それぞれの役割をこなしつつ、みんなでひとつの作品を生み出していく。すごいよな。

「あちら側」だと思って、自分とは縁のない世界だと諦めていたその場所に、なんとなく自分も入れてもらえて、丸一日とても楽しかったのですよ。もうすぐ、深夜を過ぎると、この魔法はとけてしまうのかもしれないけど。

とにかく、良い1日だった。