25年前のサンフランシスコの思い出

25年前のサンフランシスコの思い出_c0060143_11443758.jpg

15日間のアメリカ長距離列車の旅は、出だしは良かったのですが最後の方は散々でした。

当時住んでいたネバダ州のリノを出発したのが1996年1月30日。そこから、長距離列車のアムトラックに乗りっぱなしで2泊3日。タイムゾーンを何度か抜けたら現在時刻が分からなくなり、気づけば年を越してました。

出発した時に降ってた雨は、その後どんどん勢いを増し、記録的な豪雨に。ほとんど雨の降らない砂漠気候の街に住んでたのですが、なんと川沿いのバスケコートが水没するくらい、雨が降り続けたらしい。というわけで、旅程の最後の方は電車がことごとく水害のためキャンセルされ、「さて、どうしよう」、と。

シカゴに着いて、ホテルに一泊。そしてまた電車の中で一泊しながらニューオーリンズへ。その後もサンディエゴからメキシコのティファナに立ち寄り、そこから北上してロサンゼルスへ。サンフランシスコへ到着して、そこから先へ進むことができなくなりました。

幸い、元クラスメイトがサンフランシスコに住んでいたので、そこに転がり込んでなんとか助かりましたが。かなり危なかった。

もともと、海外旅行など一度もしたことがないのにいきなり留学。海外で一人旅など、初めての体験です。なんとも、暗い気分でサンフランシスコの海岸にやってきました。

どんよりとした曇り空。モノトーンの景色がさらに自分を憂鬱にさせます。どこを見渡しても、色がない。

そこに突然、鮮やかな凧をブンブンと唸りを上げて空を舞ってるのを見つけました。風を浴びて、力強く飛び回るスポーツカイト。しばし、僕はその凧に見入ってました。

すると突然、目の前のグレーだった景色に、どんどん色が広がっていくのを感じました。美しい原色のグラデーションの凧が空を舞うたびに、モノトーンだった空にも、暗く沈んでいた海にも、海岸の全てのものに色があるのが見えてきたのです。いつの間にか僕は、さっきまでの落ち込んだ気分とは打って変わって爽快な気分になっていました。

豪雨のために、旅程はめちゃめちゃになってしまいましたが、サンフランシスコに住んでいた元クラスメイトのおかげでなんとか泊まることができ、さらにその夜はみんなで食事をしたり夜の街を歩いたりして、最高の思い出ができました。有名なゲイの街であるカストロストリートをみんなで歩いて、通りすがりの人に何か言われたのに僕は気づかず、クラスメイトの兄に「さっき、お前の尻の形が良いって褒めてたぜ」ってみんなで笑ったのが思い出。

この時の体験のおかげで、僕は旅がとても好きになりました。旅行中に何かトラブルやハプニングが起きても、それを楽しめるようになりました。命に関わる危険なこと以外だったら、どんなことでもだいたい楽しめる。「さて、どうやって解決しようかな」と、ワクワクする。で、たいていのことは「なんとかなる」んですよね。むしろ、いろんな人に助けてもらったりして、そういう人の親切にありがたみを感じる。そして僕も、恩返しや恩送りをしようと思う。

サンフランシスコの海岸で凧を見上げた時、持っていたカメラで写真を撮りました。白黒のフイルムで撮影したのでしばらくずっとモノトーンの写真でしたが、スマホのアプリを使ってAIに着色してもらいました。記憶の中の色とはちょっと違うけれど、こんなふうに白黒だった写真がカラフルに変換されるのは見ていて面白い。25年前のあの旅のことを思い出しました。

この5センチ角の小さな紙片は、これから版画を制作するためのネガです。写真は反転させています。この後、小型のプレス機で紙に転写して、版画作品をつくります。

by t0maki | 2023-01-03 11:44 | ライフスタイル>旅・散歩 | Comments(0)