「恩送りアートカフェ」プロジェクトのその後

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6月に、北千住にある「BUoY Café」にて、『恩送りアートカフェ』という実験的なプロジェクトをやってました。500円で作品を販売して、売れたお金を次に来る見知らぬお客さんにコーヒー代として渡すというもの。プロジェクトの名前の通り、「恩送り」の企画です。

初めての試みでしたので、いろいろ試行錯誤しつつ。そこで気づいたことなどをまとめてみようと思います。

■恩送りってなに?

恩送り。知ってる人は知ってるけど、そんなに認知度は高くなく。改めて説明すると、誰かに何か親切にしてもらったり恩を受けて、その人にお返しをするのが「恩返し」。恩送りは、その受けた恩を誰か別の人に送るということ。そうすることで、善意の輪が広がってく。

まぁつまり、見知らぬ人にも親切にしましょうっていう、割と当たり前のコンセプト。けどこれが、理解できない人にはとことん理解できないようで。そういう人には、うまく説明するのが難しい。

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田舎だと、ご近所さんにお裾分けをする文化などがありますが。なんでもお金や利益で勘定する人にとっては、「タダほど高いものはない」わけで、500円をもらって、その恩を誰かに送るっていう考えがまず理解し難いらしい。

よくある勘違いは、お金がある人が、貧乏な人に「施し」をするみたいに考える人がいて。いやいや、この恩送りは、そんなチャリティ企画ではないですよ、と。お金を受け取った人も、きちんと周りの人に送っていくべきものなので。この恩送りは、「500円もらった!ラッキー」っていう企画ではないのです。

そこを理解してもらえないと、この恩送りのプロジェクトは成立しない。そこを理解してもらうのが、なかなかチャレンジングでした。

最初は、作品が売れたら次に来るお客さんにほぼ自動的に500円を渡してました。そういう企画なので。けど、途中からお客さんに選択肢を与えることにしました。「恩送りのこの企画に参加しますか?」と。「はい」と答えれば自動的に500円がもらえます。そのお金で、私の作品を買ってもいいし、もちろん買わなくても良い。恩送りなので、誰かに500円分の親切を分け与えてくれれば。

つまり、「はい」と答えるだけでその500円が自分のものになるのに、その選択肢を付与したところ、約半分の方々が「いりません」と答えました。まぁ、いきなり見知らぬ人から「恩送りの企画」とか言われても、うさんくさく見えるってのはわかりますけど。それでも、拒否する人が半数になるとは予想しなかった。

もし自分だったら、恩送りの企画があれば喜んで参加するし、実際参加したこともあります。かなりショックでしたね。なので一層、この善意の輪を広めるための恩送りの企画は、また今後もやりたいと思いました。恩送りのコンセプトを広めるために。

■恩送りの輪

土日の、カフェ営業時間に滞在制作を行い、作品を販売しながら恩送りの企画を行ったところ、7日間販売して作品を買ってくれたのは60人。その売上は、全部誰かのコーヒー代に。というわけで、私は売っても売っても赤字になっていくだけ。まぁ、それでも良いかな、と。

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このカフェの一角を提供していただき、ここで滞在制作ができるってことが、自分にとっての一番の恩なので。その恩をせっせとカフェの方に還元しよう、と。その後、BUoYの運営の方がその事情を知って「額縁代出しますよー」と言ってくださったので、ありがたくそのご厚意に甘え、販売した61点分の額縁代6,710円をいただきました!これはとてもありがたい。

というわけで、このいただいた恩を大切にして、BUoYさんにさらに恩返しをしつつ、また個人的な恩送りの企画も続けていこうと思います。

■戻ってきた500円

最後にこの『恩送りアートカフェ』の番外編的なエピソードを。この企画を行うにあたっては、作品を販売したときのお釣りや、次の人に渡すためなど、小銭を多めに用意する必要がありました。なので、帰り道に自販機で千円札を使ってドリンクを買って、お釣りの小銭をゲットしようとしたのですね。ところが、お釣りが500円足りない。投入したのが1,000円だというのは確か。財布に残ってる最後の千円札だったので。なのに、100円のドリンクを買って、お釣りが400円しか出てこない。

自販機に書かれたサポートセンターの窓口は、業務時間を過ぎている。とりあえず、その日はそのままに。しばらく忘れてたけど、その自販機の前を通りかかるたびに「あ、あの時500円のお釣りが出なかった自販機だ」と、モヤモヤした気持ちになる。というわけで、恩送りアートカフェが終わった後、お釣りが足りなかった事件から1ヶ月くらい経ってから、その自販機の飲料メーカーさんにちょっと長めの手紙を書きました。その、自分が開催していた恩送りのプロジェクトについてや、そこでお釣りが必要になった経緯なども含めて、A4用紙数枚にわたって書いた長文。

なにかしらその内容について返信があるかなと思ったら、見事なまでの提携文で、ご丁寧に「お電話ありがとうございました」とまで書いてある。手紙で連絡したのに。

そんなわけで、現金書留で500円を受領しました。これも、小さな恩送り?いや、そもそも自分のお金ではあるけど。返金の誠意は受けとりました。

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こちらの500円も、恩送りの輪に加えますかね。

by t0maki | 2022-08-05 04:13 | アート | Comments(0)