森岡書店で購入した『私東京』
2022年 07月 17日
期間を区切って、こだわりの一冊だけを店頭で販売。その本に関連した展示なども同時に行いつつ。作家さんが滞在したりなど、アートギャラリーのような感じ。
以前、映画『タリナイ』の監督、大川史織さんがここで本を販売した時に、初めて訪れました。
今回はまた、知人が寄稿した本が出るということで、さっそく行ってみました。実際に行ったのは4月なんですけどね。読んでからブログ記事を書こうと思ってたら、なかなか読めてないまま時間が経っちゃったので、先に記事だけ書いておきます。読んだ感想はまた後程。
寄稿した何名かと、優美堂再生プロジェクトでご一緒しました。
以下、宮本さんの巻頭文を一部抜粋。
はじめは、コロナ禍の「東京」について、絵と文で各々が活写するルポルタージュのアンソロジーにするつもりでした。しかし、学生たちの取材活動がはじまって早々、僕はルポとしてこの企画をまとめることを諦めました。というのも、学生たちが街から持ち帰ってくる原稿はいつも、はじめは「都市」について描写しているのに、いつの間にか「私」についての記述に還ってくるのです。何かを観察し、調査し、インタビューしていても、そこで語られているのはいつも、彼ら自身の東京物語なのです。<中略>いま僕はこの本を編み終え、乗り換え可能な「いくつもの私たち」の時代を生きていることに気づきました。そのような交感し響き合う小さな物語たちをもっと読んでみたい、もっと編んでみたいといま強く思っています。
素敵なプロジェクトですね。しかも、実際に本屋で販売するところまで、しっかりと。
後ほど、拝読させていただきます。
* * *
7月18日追記:
読了、ということで。以下、感想。
藝大で絵を学ぶ学生さんたちが書いた、私的な東京のルポルタージュのエッセイ集といった本を想像していたのですが、中身はもっと自由で多種多様で、ここち良いカオスな感じがして読んでいて面白かったです。
ひとつ、学生にしてはなかなか骨太でどっしりとしたドキュメンタリー作品のイントロダクションみたいな作品があって、「おぉ、これはぜひ続きが読みたい」と思って最後に作者の生年月日を見たら僕よりも10以上も年上の方だった。なるほど、いろんな人が書いているのですね。
さくさくっと読み進めて、半ば読み流してしまった「ショートケーキ」の作品が、実は森岡書店店主の森岡督行さんの作品だったり。この作品、うまく書けているのですが、とらえどころがなくて。本気なのか、もしくは冗談で書いているのか判断がつかなかったのですが、森岡さんの文章だと知って納得。さすがに、学生の文章ではないもんなぁ。
若い時に書く文章って、どうしても「私」が入ってしまうのはある意味当然で。それぞれの「私+東京」を、絵画を学ぶ学生さんたちが文章で表現するって、なかなか面白いと思いました。この書籍の、5名の方々は実際に面識がある人たちなので、文章を読みながらどうしてもその人たちの顔が浮かんでくる。それはそれで、作品にひとつのレイヤーを重ねるということなので、読んでいて面白かったです。
会話をそのまま録音するように、文章に表現する作品とか。あるいは、「場」を描きつつ、そこに出てくる自分は未来の空想上の存在であったり。と思えば、そのまま日記の体裁であったりとか、備忘録的なメモの連なりであったりとか。共通しているのは、「視覚的」であることかもしれない。読んでいて、ビジュアルが浮かんでくる。言葉で描かれた、絵画のような。
面白い作品でした。10年後、それぞれの作者さんたちがどのように「私東京」での体験を昇華して、どんな道を進んでいくのか。その時にまた答え合わせのように読んでみたいと思う本です。
by t0maki
| 2022-07-17 12:49
| 優美堂
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