「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」でラドンのセットに感動する

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東京都現代美術館で、「生誕100年 特撮美術監督 井上泰幸展」を観てきました。
埼玉県立近代美術館のイベントに登壇した際に、招待券をいただいて。

特撮ヒーローもので育った世代なので、見るものすべてが面白くて。「こんな風につくられていたのかー」と、感心しつつ。
特撮美術の大道具やセットそのものもすごいですが、さらにその制作進行のお金やスケジュール管理などのプロジェクトマネージメントの部分も見えたりして、それがとても興味深かったです。パソコンの無い時代、当たり前だけど全部手書きで。設計図とか予算とか、イメージボードなどを全部ペライチ資料にまとめて、それをチーム内で共有するとか、素晴らしい。

大阪万博で、黒川紀章さんのメタボリズムをテーマにした展示と並んで、井上さんが手がけた特撮動画も近未来の魅力がたっぷりつまっていて、「あぁ、こういう時代だったな」って改めて感慨深い。

今回の目玉は、映画『空の大怪獣 ラドン』の再現セット。こちらは、最新の技術を駆使して2か月かけて制作したらしいですね。
この展示を見た後、実際の映画も見てみました。翼の羽ばたきで、街が破壊されていくさまが特撮美術を使ってリアルに映像化されています。ただ、その尺がほんとうに短くて。最初からもう、強風で破壊されていく映像ばかりなのですね。この短いカットのために、膨大な時間と手間がかけられているんだな、と。感心しました。

今回のラドンセットは、当時のものを再現したものです。

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リアリティのある電車。映画の中では、ほんの一瞬ですが。

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当時はもちろん、パソコンなどデジタルでのグラフィック制作などなかったので、こうしたミニチュアの看板もみんな手作り。看板の左側の文字が「宮地崎 津屋岳」ってなってますが、右側は「宮地岳 津屋崎」となっており、この誤植もオリジナルのセットにあったものらしいですよ。そこまで再現するとは、すごい。

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当時と違うのは、ベースとなる板の加工にレーザー加工機が使われているということ。パソコンで作成したデータをもとに正確にカットできるので、すごく便利。
当時の人たちは、そこも全部手作業でやっていたのだから、すごいですね。

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この、丸太の足組は、井上さんが現地を視察した時に既にあったものを忠実に再現したもの。美術セットをつくるにあたって、ここの部分は省略してもよい部分だったはず。それをあえて残していることにこだわりが感じられます。街が破壊されるというシーンなので、この足場があることでさらに風の威力を感じることができますし、観ている側にとっては迫力が増します。この丸い棒のパーツはレーザー加工機では出力できないので、全部手作りだそうです。

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屋上の観覧車。こちらもレーザー加工機で作成。

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映画の一瞬のシーンのために、ここまでつくりこむのはすごいな、と。
パソコンやデジタルCGIなどがなかった時代。すべてこんな風に手作業の連続なのですね。

僕らが見ていた特撮ヒーローの世界も、こういったクリエイターのひとたちが関わっていた、と。
感動しました。


by t0maki | 2022-05-22 23:44 | イベント・スポット | Comments(0)