インクルーシブな音楽について考えてみる

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まず、楽器とは何か?
それは、音楽を作るための道具である。楽器が奏でられることによって、音楽が生まれる。ひとつの楽器、たくさんの楽器。

音楽とは?音のリズムやメロディ、ハーモニーによって作られるものだと思っていた。今回のワークショップに参加するまでは。

インクルーシブな音楽とは?つまり、音を近くできない人が、音楽を堪能するには?

光や、振動で音の有無を伝えることはできる。けどそれって、本当に音楽を伝えることになるのか?そこに音階があって、リズムがあって、音の重なりの存在を伝えられたとして、それによって素晴らしい音楽を聴いた時の感動を味わうことができるだろうか?

どんな人も、同じように音楽を楽しむためには?むしろ、音にこだわらず、音以外の方法で音楽を作ってみれば良いと思った。そして、それをつくるための、音に縛られない音楽をつくるための楽器とは?

耳で聴く以外に、音楽を感じるのは?味覚?触覚?視覚?嗅覚?

音楽のような感動を与えてくれるのは?例えば、優れたコース料理はまるで音楽のように人を感動させることができる。口の中で形作られる、味のハーモニー。料理と厨房のリズム。味の濃淡や、色の強弱がメロディの代わりとなる得る。音楽にインスパイアされた料理が、人を感動させることは可能だ。

音楽を視覚的に表現することもできる。けど、それが音楽と同じくらいひとを感動させるには、単に音の波形を視覚化するだけでは難しいかもしれない。視覚芸術的な価値は、作る方も、観客も、両方の素養が問われる。素晴らしいパターンの図柄で感動することができれば。色の強弱によるメロディと、色の重なりによるハーモニー。色と、その色の背景にあるストーリーを知れば、視覚的な図形の連続でも、ある程度は音楽を想起させることが可能かもしれない。わからないけど。

そこで、感動の源泉を知りたくなる。何がひとを感動させるのか。たぶん、そこに必要なのはストーリーであると思う。人が感動するのは、そこに人の心を動かすストーリーがあるから。心を動かす、メロディ。迫力のある音質。そして、そこに付与される情報、背景。

匂いの記憶。なにがしかのストーリーを喚起するような、嗅覚の刺激。それによって、音楽と同じような感動を引き起こすことはできないだろうか?

雨上がりの匂い。ペトリコールとゲオスミンを再現したような匂いで、自分の中にある雨の記憶や感覚、その時の感情が想起される。そこから生まれる、音楽的な体験。匂いの組み合わせによるハーモニー。さまざまな匂いが、音階を形づくる。それを実現するための、匂いの楽器。これは、面白そうだと思った。

人を感動させる音楽を、音以外のメディアで創造する。

詩や、言葉もありかもしれない。複雑に絡み合う言葉のハーモニー。読んでいく時のリズム。韻をふみ、音節を揃える。音楽のように心地よい、詩。これも、実現可能だと思う。

あとは、なんだろう?それこそ、そのまま物語を紡のも良いかもしれない。演劇的な手法も良いだろう。芸術の力によって、音楽と同じ感動を与えるということ。

音を知覚できない人に、演劇を理解してもらうハードルはそこにもある。やはりそこも、言葉による補完が必要なのだろう。

あぁ、ここでとあるドキュメンタリー映画のことを思い出した。ここではまだ書けないけれど。手話や字幕によって、音楽もどれだけ翻訳・通訳が可能なのかということ。

いろいろと、考えることが多い。ワークショップはあと三日間しか残っていない。音を振動に変換する電子工作も面白いのだが、僕が本当にチャレンジしたかったのはそこではない。

もっと本質的に、インクルーシブな音楽パフォーマンスを実現する方法をもっと模索したいのだ。


by t0maki | 2022-06-29 19:01 | Comments(0)