『恩送りアートカフェ』を北千住BUoYで開催

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とにかく、たくさんの作品を短時間で制作する必要があった。

北千住のBUoYという場所を知ったのは、知人が出展する作品展を見に来たのがきっかけ。ボーリング場だった空間がカフェにリノベされていて、とても素敵な空間だった。しかも、自宅から歩いてこれる距離にある。

「ここでなにか展示をやりたいな」と漠然と思っていたのだが、それは結構早く実現した。『アーティスト・イン・カフェ』という企画の参加者を募集しているというのを教えてもらい、60枚のパワポ資料を持って行ってプレゼンした結果、6月の3週間、カフェスペースの一角で滞在制作と展示をさせてもらえることになった。

その時すでに「恩送り(pay it forward)」をテーマにしたアートプロジェクトにしようと決めていた。アート作品を販売して、それを売ったお金を次に来る見知らぬお客さんにコーヒー代として渡すっていう流れはすでに頭の中にあったので、それを実現すべく妄想シミュレーションしつつ、現場で試行錯誤を重ねつつ形にしていく。

6月2日に在廊(在カフェ)しながら作品の制作をはじめ、その週の土曜日から作品の販売を始めた。最初の週末で30点の作品が売れ、29名の方へコーヒー代をお渡しした(残りの1名分は翌週へ繰り越し)。

企画としては大成功だったが、圧倒的に作品が足りない。いかに短時間にたくさんの作品を効率的に生み出すかが課題だった。

当初の企画段階では「ハンコアート」の作品を制作する予定だった。しかし、これだと一点の作品を描くのにだいたい1時間かかる。前回、東リ町アートフェスに作品を提供した時は、11点の作品を描くために10時間以上かかった。今回は、もっと短時間で、かつコーヒー一杯分の価値がある作品をつくらなければならない。

というわけで、今回はひさしぶりに「image transfer print」の手法で名刺サイズの小さな版画作品を制作している。この手法は、僕が学生時代によく使っていたもの。写真をベースにそれをネガにして、溶剤でインクを溶かして版画プレス機を使って紙や布などにイメージを転写するという手法。たまたま、ドイツのクリエイターさんたちがつくった小型の卓上プレス機をクラファンで入手していたので、ちょうどそれが使えたのも良かった。名刺サイズの和紙と、6センチ角にカットした水彩画用紙にひたすら作品を刷っていく。

最初に作品のモチーフな選んだのは、中銀カプセルタワービル。ちょうど現在解体中のこの建物。50年前に黒川紀章さんがつくった、140個のカプセルが連なる特徴的な建築。2019年に1ヶ月間住んでいたので、その時に撮影した写真などを使って、版画作品を制作した。思い入れのある建物なので、作品の展示をしながらお客さんといろいろおしゃべりができる。最初の週末は、ひたすらこの作品をつくって、販売した。

次につくったのは、20年前に撮影した白黒のフイルム写真を現代のAI技術で着色して、それを版画にしたもの。これも、一つ一つの作品に自分にとって思い出深いストーリーがあるので、作品について話がしやすい。時々、AIがユニークな着色をする。記憶の中の色と、作品の色とが異なることもあるのだが、それはそれで面白い。

そしてさらに、チェコを旅した時に撮影した写真から作った版画作品も加えた。これも、チェコ親善アンバサダーとして活動している自分には、思い入れのあるモチーフである。

いろんな版画作品をつくっているが、今回の『恩送りアートカフェ』の主役は、これらの小さな版画作品ではない。
このアートプロジェクトの仕組み自体が主役であり、もっと言えばこのカフェという場と、そこに来てくれるお客さんがいてこそ成り立っている。「恩送り」という、善意を次の人に渡す仕組み。そこに、たまたまアート作品を加えてみたというだけ。

今回の「アーティスト・イン・カフェ」のプロジェクトで、私が受けた一番大きな「恩」は、このBUoY cafeの一角を滞在制作の場として提供いただいたこと。なので、そのご恩を「恩送り」という形でカフェに還元している。作品が500円で売れたら、そのお金をそのままカフェに渡して、次に来るお客さんのコーヒー代にする。そして、コーヒーを受け取った人は、また次の誰かに「恩送りを」してもらう。こうして、人々の善意が循環していく。

もちろん、コーヒーをおごってもらった全員がこの恩送りの輪に参加するわけではない。「コーヒーが当たった!ラッキー」で終わってしまう人も一定数いる。それはそれで、想定内だ。世の中には、いろんな人がいる。でも、できればこのプロジェクトは、恩送りを理解できる人たちと一緒に実行できると嬉しい。池に小石を投げて、そこからさざ波が広がっていくように、恩送りが広がっていくと嬉しい。

そんなわけで、僕はせっせと作品を制作・販売し、その売り上げ全額を次に来るお客さんに渡している。当然、売れば売るほど赤字である。「日曜アーティスト」なので、楽しく創作活動ができればそれでよい。

というわけで、今週末は10点の作品が売れ、合計40点の作品が旅立っていき、そして39人の方へコーヒー代をお渡しした。

次の週末も開催する予定。さて、次はどんな作品をつくろうか。

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Artist in Café『恩送りアートカフェ』プロジェクト | BUoY
https://buoy.or.jp/program/onokuri/

6月25日(土)まで、週末を中心に開催予定。在廊の情報は、Twitterで発信しています。

by t0maki | 2022-06-13 11:04 | アート | Comments(0)

書くこと、つくることが好き。旅をしながら写真を撮ったり、製品レビューをしたり、思いつきでいろんなところに飛び込んでみたりします。英語と走ることが得意。

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