『13歳からのアート思考』読書メモ
2021年 12月 04日

「絵を見ていた時間」と、「解説文を読んでいた時間」、どちらが長いですか?という問いかけから始まるこの本。
しまった、僕はこの本の想定読者ではなかったかもしれない。だって僕は、絵を見ている時間の方が概ね長いから。もちろん、作品にもよるけけどね。また、その美術館に滞在できる時間にもよるけど。気に入った作品展は、10回以上足を運ぶことがある。その度に、違う発見があって面白い。
僕は、この本を読み進めるべきか?
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花職人とアーティストとの対比について。
この場合、例として花職人が出てきているけど、要は職人とアーティストの対比のことですね。クラフトと、アート。
僕は、どちらも「つくる」という点で、アートだと思うんだよな。職人のように絵を描く人もいるし、芸術的な工芸品を作る人もいる。つくるという行為は、分け隔てなく素晴らしいと思うんだ。ここ、分けようとするのはなんでなんだろう?
ここ最近、アート作品を的確に効果的に展示するための「インストーラー」という優れた職人的な仕事をする人のことを間近で見て、かつ少しだけ体験もして、ますますそう思うようになった。人間の創作行為全体が「アート」で良いと、僕は思う。
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アートとデザイン。アートは、問いを見つけるものだというのは、この本だけでなく、アートを知る人たちの通説のようだ。一方、デザインとはそこにある正解を導くことなのだと思う。僕は、大学でアートを学んでから、社会人になってからデザイナーとして働くようになった。デザインとは、使い手の視点に立って整えること。アートとは、観客の視線を意識するしないとに関わらず、表現をすること。そしてその表現が、答えのない問いであったりもする、と。そんな認識。もちろん、両者に明確な線引きがあるわけではなく、白と黒の間に限りなく広いグレーの領域が存在する。
リアルな表現と、意匠的なデザインのところを読んでいて、少し脱線した。今、133ページあたり。
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デュシャンの作品について。目の前にある作品単体よりも、それが作られた経緯や、リジェクトされたこと、紛失後に第三者によって再生されたことなど。作品を取り巻く背景やストーリーを知ると、もっとこの作品のことが理解できますね。問に対して自分なりの正解を感性から導き出すのも良いし、こうやって調べたり学んだことをベースに作者の意図や時代や価値観について学ぶのも面白い。きっと、どちらか一方だけでなく、バランスが大事なんだな。より作品について理解して感動するには、両方が大事。
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こうして見ると、アーティストは問いを投げかけるだけで、課題解決は不要とも思われる論調だが。そんなことはない。アーティストが課題解決のために動いても良いだろうし、むしろそれを実践している人もいる。もちろん、大小さまざまな、時には個人的な課題だけを見せて作品とする「アーティスト」も多いが。解決の方法を知らないのか、あるいさそもそも解決する気がないのかも。しらんけど。
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常識や正解にとらわれるなと言うが、そもそも基礎を知らないで奇抜な表現ばかりをしようとするのは滑稽だ。他と違う自分なりの作品をつくらなければならないのは分かるが、最初からセンセーショナルな「人とは違う」ものばかり求めていても、そこに真理は生まれない。
ピカソも、基礎があったからこそ、それをあえて崩すことができたのだ。
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読了。この読書メモを書きながら、読むのにかかった時間は45分くらいかな。面白い本でした。アートは、自分の好きなテーマだし。あらためて、いろいろ考えをまとめるきっかけになった。
川沿いのベンチで読んでいたら、すっかり体が冷えたので、温かいコーヒーが飲みたくなった。どこかお店に入って、2冊目の本を読もう。今日は、散歩をしながら読書をする日。
by t0maki
| 2021-12-04 12:43
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