『ケーキの切れない非行少年たち』を一気読み

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世の中には、「不器用」な人がいて。

例えば、対人関係が苦手で人とのコミュニケーションがうまくとれない人とか。
感情をコントロールするのが苦手で、すぐにキレてしまうとか。つまり喧嘩っぱやい人ね。

あとは、なんでも思い付きでやってしまって、段取り悪くて失敗する人。料理が苦手な人。部屋が片付けられない人。夏休みの宿題が終わらない人。

とにかく体を動かすのが苦手で、運動音痴であったりとか。ダンスが苦手とか。

漢字が苦手。計算が苦手。絵が下手とか、色んな人がいる。

完璧な人なんていないから、例えばすごく頭が良くてなんでも器用にこなすのに、恋愛は極端に下手とか。
漢字の知識はすごいのに、リズム感ゼロで歌がものすごく下手とかね。

人それぞれ。

非行に走る少年たち。彼らは、とある事情でなにかが人より不器用だったのかもしれない、と。この本を読みながらそんな風に思った。

「ケーキが切れない」っていうのは、例えば丸いホールケーキを、3等分にするにはどうすればよいか?とか。5つのリンゴを3人で分けるには?みたいな課題がうまく解決できないってこと。「知能障害」とか、完全に障害とまではいかなくとも「境界障害」と呼んでるけど、それって特殊な事例ではなく、意外と身近にあって、みんなの中にもあるんじゃないかなと思った。

僕は、その不器用さはどうやったら改善できるのだろうか?みたいなところに興味がる。この本は、すごくよくまとまっていて、事例も豊富だし、なにより著者さんの体験が反映されていて面白い。

受刑者を養うのに、一人当たり300万円かかる。その受刑者を健全な納税者に変えることができたら、毎年100万円の納税によって、400万円の経済効果があるっていう考え方も興味深い。

そして、この本を読んだ後、「じゃ、どうすればよいのかな?」ってことをすごく考えたくなった。

この、「コグトレ」の紹介も確かにあるけど、あまりしっかりはっきりと具体的には見えてこないので、もうちょっと、すこし俯瞰で、解決策を考えてみたくなった。

最後の方の、この脳みその損傷の話は、あまり興味がないというか、それとこれとは違うよね、という個人的な意見。無関係ではないだろうけど、それが根本的な理由じゃないよな、とも思う。

前から、「サイコパス」について考えたりもしてるんだけど。気遣いができずに平気で人を殺したり、犯罪を犯したりできる人。思いやりの心を持たずに、自分の利益のために平気で周囲の人を傷つける人。なぜ、そういう人が生まれるのか、みたいなことの糸口になりそうかも。この本を読んで思った。

非行少年の、5+1の特徴の部分ね。

認知機能の弱さ
感情統制の弱さ
融通の利かなさ
不適切な自己評価
対人スキルの乏しさ

+1
身体的不器用さ

学ぶ能力が低いとか、すぐ怒るとか、段取りが下手とか、自分を過大評価したり、あるいはその逆で卑下したり。人と接するのが苦手だったり。
そして、自分の体をうまくコントロールできないとか。運動やダンスが下手、手先が不器用、歌が苦手、字が汚いとかね。

でも、そういう欠点がある人が全員非行に走って犯罪者になるわけではない。自分で何とか努力して、立ち直る人もいる。一度は非行に走ったとしても、手遅れになる前に気づいて、修正できた人も多いと思う。

その、「立ち直るきっかけ」の部分を知りたい。

勉強や運動が苦手なまま、恋愛下手で対人コミュニケーションもうまくできずに、ゆがんだ自己評価のままサイコパスが育ってしまうのか。
あるいはどこかでなにかのきっかけで、成長することができるのか。

自分の欲望をコントロールするということ。「8歳以下の幼女にいたずらをする性犯罪者」っていうプロファイルがこの本に出てた。それをなくすには?というのを考えると、なにかしらの答えが出てきそう。抑圧された人物。実際に、子どもの頃にイジメられていたり、あるいは家族から暴力を振るわれていたり、あるいは無視されていたりとか。そういったところに原因があるのなら、その原因を解消するには?ということを考えれば良いんだな。居場所をつくるとか、得意なものを見つけるとか、目標をつくって成功体験を味わうとか。

なにか、「これだけをやればOK」っていうような鉄板の解決策はないと思う。それは、それぞれの問題が千差万別でさまざまだから、解決策もケースバイケースでさまざまなのだな。やっぱり、そこに必要なのはその個々の課題を解決して、モチベーションにつなげるための、「メンター」的な存在なのかもしれない。もしくは、そういった「場づくり」かな。誰か大人が教えるだけでなく、子ども同士が支えあうというような。不器用な対象をいじめるのではなく、お互いが助け合って伸びていくような。そういう場。

こういう議論をするときに「今の時代は」とか「日本は」っていう論調になりがちだけど、これは時代を超えて、国を超えて、普遍的に考え、解決すべきことだと思う。

というわけで、その課題が見えてきたところで、あとはどうやって解決策を見出すか。

面白い本でした。そして、この先の解決方法については、それぞれが考え、そして気づくことが必要なのだろうなと思った

この本、昨年の6月に図書館で予約をして、ようやく自分の番が回ってきたので今日借りてきたとこ。そのままカフェで少し読んで、家に帰ってきてから一気に読了。

借りた初日に全部読むなんて、久しぶり。さすが売れている本、読みやすい。そして、しっかりと考えさせられる。改めて、面白かったです。


by t0maki | 2021-02-21 16:50 | ライフスタイル>映画・書籍 | Comments(0)