『透明標本』の読書感想文
2019年 02月 27日

死体を扱った奇抜なテーマなんだけども、変におどろおどろしくもなく、淡々としたリアリティのある描写で物語が進んでいく。それが逆に怖かったりもする。
短編集だったので、順番を変則的に読んだのも良かったかもしれない。冒頭の、昭和の映画に出てきそうな、轢死したボクサーの話。いろんな視点から、1つの事象を立体的に描いてる。
次に読んだのが、表題作の『透明標本』。なるほど、賞にノミネートされるような作品だなと思った。
その後、その作品に出てくる死体を主人公にした異色作を読んだ。商業誌に一回断られたのが分かる。そして、別の文芸誌に掲載されたというのも。良い作品で僕は好きだけど、相性があるなとは思った。
吉村さんの作品をそんなにたくさん読んだわけではないけど、すごく落ち着いて安心して読めるなと思った。読んだのが短編だからかもしれないけど、なんとなく、皆んなが好きなどんぶり飯みたいな印象。美味しいし、間違いがない。高級料亭の割烹料理とはちょっと違う。もっと、皆んなが気軽に楽しめる料理っていう印象でした。
これがまた、後期の作品だとまた印象が変わるのかな。昭和の、プロの作家さんだなー、と思いました。
この後、燃え殻さんの小説を読んだのですが、時代的な作風の対比が激しかった。時代によって、小説のトレンドって変わるんだな、と。
もっと吉村さんの小説を読んでみたくなりました。
by t0maki
| 2019-02-27 11:28
|
Comments(0)