『秘密』に関する3つの掌編小説
2018年 07月 20日

真っ暗な闇の中。その闇を光が照らした瞬間に、闇は闇ではなくなる。同じように、他人には知られてはいけない秘密が明らかになった瞬間に、その秘密は秘密ではなくなるのだ。
秘密、とは?
秘密、とは?
「二人だけのヒミツだからね」と、彼女は僕の耳元でささやいた。
すっかり氷の溶けたグレフルハイをストローでかき回しつつ、「なんだろね。こんなこと今まで誰にも話したことなかったのに」
そう言って彼女は少し恥ずかしそうに笑った。
秘密の共有。
「あと少し、あと少しだ」
銃弾は幸いなことに肩を掠めただけ。トレンチコートの袖が血で真っ赤に染まっているが、このまま進むしかない。人気のない裏通りをわざとジグザグに歩く。絶対に尾行を巻かなければならない。
この【マクガフィン】に収められた秘密を守り抜かなければ。なんとしても。
秘密を守る。
「ごめんねー、今月またお金が無くなっちゃってさー」
──どうせまたギャンブルだろ。
と、ワタシは思ったが、口には出さなかった。
「で、いくら欲しいの」
「10万。……いや、5万でいい」
こんな男と、なぜ3年も結婚生活を我慢できたのか不思議でならない。そして、元旦那となった今でもなぜこうして会っているのか。
「うちも苦しいの知ってるでしょ。2万なら渡せるけど」
「てめぇ、あの秘密をチラシにしてばら撒くぞ」
こいつが絶対にそんなことしないのは分かってる。金づるが無くなって困るのはこいつの方だから。
ワタシが黙って3万円を差し出すと、それをひったくるように受け取り、男は家を出て行った。
知られたくない秘密。
いろいろな秘密。
あなたの秘密は?
by t0maki
| 2018-07-20 12:52
| アート>もの書き
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