「安いカメラでもえぇやん」っていう話
2017年 11月 01日

で、このスライド。ここには、ロサンゼルスで撮影したピンホール(針穴)写真が大きく掲載されています。左側の、もやっと白い丸の中、下の方にチョコチョコ建物が建ってるの、見えます?これ、ロサンゼルスです。
24歳の頃、ロサンゼルスで仕事をしてました。宝石デザイン会社で、一日中アクセサリーの商品写真を撮る仕事。広告に使うために、フォトショップでリタッチしたり。それはそれで面白い仕事だったんだけど、さすがに仕事で写真をずっと撮ってると、だんだん写真に対する熱量が下がってくると言うか、なんだかある時を境にとてもつまらなくなってしまったんですね。まじめにきちんと写真を撮るのが、なんだかとてもとても退屈になってしまった。
そんなわけで、週末には空き缶とか箱とか利用して、自分でピンホールカメラをつくって、中に印画紙をいれて持ち歩いて、家の近所で写真を撮ってた。フィルムケースに錐で穴を開けただけの「え?これがカメラなの?」っていうちっぽけなゴミみたいなカメラで撮った、ロサンゼルスの写真が、なぜかニューヨークとロンドンに会社がある出版社の人の目に止まり、写真集に載せてもらったんです。もう、だいぶ前のことですけど。インスタグラムが流行る前に、Fotologっていう写真投稿サイトがあって、世界中の人たちが思い思いの写真を投稿してたんです。で、僕も当時フィルムで撮った銀塩写真をデジタル化して、せっせと投稿してました。主に、ロシア製のトイカメラとか、やすっぽいプラスチックの連写カメラで撮ったような写真をどんどんアップしてたんです。で、その中にたまにピンホールカメラで撮った写真もあって、なぜかピンポイントでこの写真が選ばれた、と。
その写真集には、1000人くらいの人たちが作品を提供していて、みんなすごく写真が上手なワケですよ。そのものすごいたくさんの写真の中で、僕が絶対に一番だと思うのは、使ってるカメラのチープさ。誰よりも僕のカメラが一番安いのは間違いない。だって、普通だったらゴミとして捨ててしまう、フィルムケースだからね。それに穴を開けて、中に写真の印画紙を入れて撮っただけ。
安くておもちゃみたいなカメラだって、いや、そういうカメラだからこそ、面白い写真が撮れることもあるってこと。

実はこの写真、レンズ付きフィルムの「写ルンです」で撮影したもの。全く高価なカメラではないけど、その場所にぴったりな良い写真を撮ることができました。
この写真をコンテストのようなものに応募したら、後日富士フイルムさんから写ルンですが3つ送られてきて、もしかしたらこの調子でカメラを1台使うごとに、新しいカメラが3つずつ送られてきたとしたら、延々カメラに困らなくてすむなぁ、なんてアホなことを考えたり。
わりと、安いカメラでも喜んで写真を撮るし、カメラの個性にあった面白い写真が撮れるとうれしくなります。
という話。
by t0maki
| 2017-11-01 22:11
| アート>写真
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