『0円キッチン』を観た感想とか考えたこととかごった煮にして公開

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世界で生産される食糧のおよそ3分の1は、食べられることなく廃棄されているという。その量は、年間13億トン。あまりにも数字がでかすぎて全然イメージがわかないけど、スゲー量なのだなというのは分かる。

「食品廃棄」をテーマに、ヨーロッパ5カ国を5週間かけて巡り、「捨てられる食材で美味しい料理をつくってみんなで食べよう!」っていう試みを行ったダーヴィド・グロス監督のドキュメンタリー映画、『0円キッチン』を観てきました。公開初日のこの日の上映は、ダーヴィド・グロス監督のトークもあり、イベント後にちょっとお話を伺ったりもして、「食」について考えるきっかけになりました。

以下、『0円キッチン』の解説に加えて、僕個人の感想とか調べて学んだことなども織り交ぜつつ、映画と食品廃棄について語ります。

* * * 

車を改造して廃油で走るようにして、さらに後ろにはゴミ箱でつくったキッチンを備え付け、オーストリア、ドイツ、フランス、ベルギー、オランダを巡りながら、食品廃棄の実情を浮き彫りにしていく。面白いのは、捨てられる食品をただ撮影するのではなく、その廃棄される食品を使って料理をしたり、パーティーを開いたり、なんとも楽しそうなのである。そして、それを食べている人たちもみんなすごくそれを楽しんでる。「チョッピングパーティ」って言って、捨てられる食材を持ち寄って、細かく切ってスープにしちゃうっていうイベントも面白そうだ。

一般家庭の冷蔵庫から捨てられる食材を集めて料理をしたり、町に自生する果物を使ってジャムをつくったり、時には野草(花)や昆虫を食べたりなども。

今回のドキュメンタリーはヨーロッパで撮影されているけど、日本でも同様に食品廃棄は問題になってる。消費者庁の調べによると、日本では年間2,297万トンの食品が廃棄されてるんだって。そのうち、まだ食べられるのに廃棄されるものが632万トン。「どうせスーパーやコンビニ、ファーストフード店が大量に捨ててるんだろう」と思ったら実は、家庭からの廃棄がその約半分近い302万トンもあるらしい。映画の中でも、冷蔵庫の中から捨てられる食材を集めて料理をするシーンがありましたが、我々ひとりひとりが食品廃棄をなくすことで、半分近い食料が救われるってこと。なるほど。

ただ、やっぱり僕らの冷蔵庫だけでは全ての食品廃棄を止めることはできなくて、そこで問題になってくるのが「野菜や魚の規格」の問題。野菜が出荷される際に、サイズや色などが規格に合わない野菜は弾かれてしまう。育ちすぎたズッキーニは、もう売れない。同様に、漁業の現場でも規格に合わない小さな魚はお金にならない。だから、捨ててしまう。

■食品廃棄を減らすために
もったいないの精神は大事。食べ物を大切にして、かつ買いすぎない。限られた食材で上手に料理ができるようにする。そして、形が悪かったり、多少いびつな野菜でもありがたくいただく。買う側も、つくる側も、捨てる食べ物を減らすということ。
賞味期限が近づいた食材をただ捨てるのではなく、きちんと有効活用すること。食べられる食品を廃棄することを禁止する法律ができるようになってきたらしいですよ。

■そもそも食べ物とは?
ここで考えるべきは、「食べ物って何?」っていうこと。賞味期限と消費期限の違いを理解しないと。賞味期限は美味しく食べられる期間のこと。消費期限は安全に食べられる期間のこと。意味が全然違う。卵の消費期限も、本来であれば季節によって変えるべきなのだけど、家庭用のたまごは夏場の一番痛みやすい期間を基準に消費期限を設定しているから、実は冬場はもっと長持ちする、と。

自分の舌を信じて食べられるものは食べよう、と。

そしてさらに、今まで食べものと認識されていなかったものも食料にしよう、っていう方向性も。具体的に言うと、「虫」なワケです。世界中には、1,400から2,000種類の「食べられる虫」がいるらしい。それらを、積極的に食糧にしよう、と。アフリカでは普通に食べられたりしてるけど、実は日本も結構虫食は文化に根付いていて、イナゴとかハチノコとかむしろ好んで食べられていたり。海藻を平べったく干して「海苔」にして食べるのも、海外の人から見たら不思議な光景だよね。

スーパーで販売されている食べ物だけが食材ではなく、例えば野草であったりとか、街路樹になる果実であったりとか、食品として流通しているもの以外でも食べられるものは意外とある。そこに気づくと、身のまわりや自然の中に食材が意外とたくさんあるってことが分かる。


■食通とか食文化とか
そもそもの話だけど、普通に食べられる食材なのになんとなく心理的に嫌だってのがあるわけで。虫なんて食べたくないよっていう人もいる。映画の中でミールワームを食べた人も、「初めて食べた時は虫が歯に挟まるような感覚が嫌だったけど、今では平気」って言ってた。異なる食の習慣を受け入れ、食文化を広げるということ。

食材の偽装とか、身体に悪い食品はさすがにダメだとは思うけど、食べられる食材を加工して提供するのは良いんじゃないかな、と。食べる側がきちんとそれを把握していることが大前提だけど。捨てられる部位の肉や野菜をつかって、食べられる料理にするのは悪いことではないと思う。

最高の食材の最高の部位だけを使って料理して、残りの食材は捨ててしまうなんてことは、さすがにやらない方が良いよね。命をいただいているわけだから、きちんと感謝しながら全て食べないと。

なんて言ってると、ダイエットのためにわざと炭水化物を残す人もいたりして。せつないよね。美味しいものを食べたいとか、痩せたいとか、個人の欲求のために食品が廃棄される。うーん。

食文化のところとも関連するけど、例えば「クジラ」はどうなんだという話。捕鯨反対の人がいる一方で、クジラを余すとこなく食や油、ヒゲなども活用する文化もあるわけで。


■経済とか環境とか
食品廃棄の現実をちょっと俯瞰で見てみた時に、環境への影響と、さらに経済への影響がある。
環境への影響は、野菜を大量に栽培し、収穫することによって土が痩せていくこと。廃棄された食料が肥料として土に還る仕組みが必要だと思う。循環型の持続可能なエコサイクルとして。農薬の問題とかね。安心安全な食べ物をつくるということが認められるように。

で、経済の問題。食べ物が流通され、お金が循環し続けることが経済の活性化につながる。なので、より多くの食品が市場に出回ることが大事。廃棄されれば、さらにそこでもお金が動く。この世の中は、お金が動き回ることで成り立っている。だから、食品廃棄がなかなか無くならない。

大量の食糧を廃棄しながら成り立っているこの文明はさ、なんかこう、血を流しながら全力疾走している人のようにも見えて、いつかどっかが破たんするんじゃないかな、とか。わかんないけどね。3分の1の食糧を捨てながら、食品を消費しているのって、効率悪いよなぁ、と。ガソリンを垂れ流しながら車が走ってるイメージかね。


映画を観終わって、帰りの電車でいろいろ考えつつ。なかなか考えがまとまらないけど、「食」っていうのは僕らにとって本当に身近な問題だから、こういうドキュメンタリー映画を観ながらいろいろ考えてみるってのは良いことだと思うんですよ。


▼アップリンク渋谷、久しぶり。
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▼ミニシアターの雰囲気、好きです。
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▼公開初日に観てきた。 #0円キッチン #フードロス #foodwaste
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▼会場からの質問に答えたり。手を挙げたけど、時間切れで質問できなかった。質問する人が多く、みんなの関心が高いってことですね。 #0円キッチン #フードロス #foodwaste #アップリンク渋谷
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▼今回、このドキュメンタリー映画を配給しているユナイテッドピープルの関根さん。 #0円キッチン #フードロス #foodwaste #アップリンク渋谷
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▼監督であり、ドキュメンタリーにも登場しているダーヴィドさんが上映後に登壇。 #0円キッチン #フードロス #foodwaste #アップリンク渋谷
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映画を観終わって、ダーヴィドさんとちょっとだけ直接お話しする機会がありました。ダーヴィドさんは、このドキュメンタリー映画をつくり、そしてこのストーリーをみんなに伝えることで、社会に対して問題提起ができれば、っておっしゃってました。グローバルな視点で物事を考え、そしてそれぞれの地域で行動を起こす、と。(Think global, act local.)

オーストリアで、たった5人程度でゴミ箱に飛び込んで食材を救出する活動から、だんだんその輪が広がっていき、ドキュメンタリー映画も撮影し、今では500人規模の活動になっていることのこと。
禅にも興味がおありのようで、道元の『典座教訓』からもインスピレーションをもらったということでした。日本の食品廃棄についても、ぜひ取材をして欲しいなと思いました。

映画『0円キッチン』は、アップリンク渋谷他で上映中です。
詳しくは、公式サイトで。


映画『0円キッチン』オフィシャルサイト

by t0maki | 2017-01-24 00:02 | ライフスタイル>映画・書籍 | Comments(0)