「ヨーロッパのハリウッド」チェコの映画事情

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プラハにある在チェコ共和国日本国大使館を出てカレル橋へ向かう途中、映画の撮影現場に出くわした。撮影機材やプロップを積んだ車両と、道端で組み立てられている撮影のセット。「MIMO FILM」という立て看板は、映画関係者以外駐車禁止の意味だろう。チェコは、「ヨーロッパのハリウッド」と呼ばれるくらい、映画産業の盛んな国だ。実際に、海外の大手映画製作会社もチェコで撮影を行っている。ミッション・インポシブルの冒頭のシーンもまさにこの近くで撮影された。
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僕は映画が好きで、学生時代の頃からだいたいコンスタントに年間100本くらいの作品を観ている。大学卒業後にロサンゼルスで仕事をしていた頃は、街のあちこちで映画の撮影が行われるのを見るのが楽しくて仕方なかった。まさかチェコでも、そんな光景に出会えるとはね。

チェコで映画産業が盛んな理由はいくつかある。


■美しい中世の情景

情緒ある石畳のストリート、中世の頃から変わらない街並みやお城。その情景や建物の美しさが中世のシーンを撮影するのにチェコの街が最適なのだ。例えば、ゲイリー・オールドマン主演でベートーヴェンの生涯を描いた映画『不滅の恋/ベートーヴェン(Immortal Beloved)』は、本来オーストリアが舞台のストーリーだが撮影の多くはプラハで行われている。同じくモーツァルトの生涯を映画化した『アマデウス(Amadeus)』も、もともとモーツァルト自身がプラハのエステート劇場で自身の作品を上演したということもあり、実際にプラハの街並みやその劇場でも撮影が行われた。歴史ものだけでなく、チェコの美しい街並みはトムクルーズ主演の『ミッション:インポッシブル(Mission:Impossible)』や、007シリーズの『カジノ・ロワイヤル(Casino Royale)』、アンジェリーナ・ジョリーが出演した『ウォンテッド(Wanted)』、マット・デイモンの『ボーン・アイデンティティー(The Bourne Identity)』などの数多くの作品がこの地で撮影されている。

       


■高い技術力と映画設備

チェコの映画制作が世界中から注目される理由は、プラハにある「バランドフ撮影所(Barrandov Studio)」の存在が大きい。ここでは、最新鋭の撮影機材と技術力の高いスタッフが揃っており、しかもハリウッドで撮影するよりも比較的安価に制作ができるというメリットがある。このバランドフ撮影所を活用して『ブラザーズ・グリム(The Brothers Grimm)』をつくったテリー・ギリアム監督は、「この作品をつくるのに8億ドルかかったが、もしこれをアメリカでつくったなら12億から14億ドルはかかっていただろう」と語っている。他にも、『エイリアンVSプレデター(Alien vs. Predator)』や『G.I.ジョー(G.I. Joe)』、『ヴァン・ヘルシング (Van Helsing)』 など、大きなセットや高い撮影技術が要求される映画などもこのスタジオで撮影されている。

   


■マリオネットやオペラ、バレーなどシアター・エンターテインメントの文化

今回、チェコを旅して感じたのは、歴史のある劇場がいろいろなところにあり、そこで現在もオペラやバレー、マリオネットのショーが上演されており、人々がそれを楽しんでいるということ。芸術やエンターテインメントの文化が発達しており、それが映画製作にも結び付いているように思った。伝統的な文化が、現代のテクノロジーと融合し、最新の映画芸術を生み出している。

今回、チェコ政府観光局にご招待いただき、チェコ国内のさまざまな地域を7日間(+飛行機2日間)かけて旅をする機会があった。単なる観光だけにとどまらず、チェコの歴史や文化に直接触れる機会をいただき、とても有意義な旅だった。映画の撮影場所も実際に見れたしね。

チェコで撮影された映画の一部をご紹介。


▼チェコで撮影された映画
『ファウスト』(Faust)
『アマデウス』(Amadeus)
『ジャンヌ・ダルク』(The Messenger: The Story of Joan of Arc)
『ミッション:インポッシブル』(Mission:Impossible)
『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』(Mission: Impossible - Ghost Protocol)
『007 カジノ・ロワイヤル』(Casino Royale / You Asked for It)
『ウォンテッド』(Wanted)
『ボーン・アイデンティティー』(The Bourne Identity)
『スパイ・ゲーム』(Spy Game)
『シャンハイナイト』(Shanghai Knights)
『ヴァン・ヘルシング』 (Van Helsing)
『ブラザーズ・グリム』(The Brothers Grimm)
『オリバー・ツイスト』(Oliver Twist)
『アンダーワールド』(Underworld)
『ナルニア国物語/第2章: カスピアン王子の角笛』(The Chronicles of Narnia: Prince Caspian)
『ナルニア国物語/第1章: ライオンと魔女』(The Chronicles of Narnia: The Lion, the Witch and the Wardrobe)
『ジャンパー』(Jumper)
『G.I.ジョー』(G.I. Joe: The Rise of Cobra)
『トリプルX』(xXx)
『エイリアンVSプレデター』(Alien vs. Predator)
『ブレイド2』(Blade II)
『リーグ・オブ・レジェンド/時空を超えた戦い』(The League of Extraordinary Gentlemen)
『幻影師アイゼンハイム』(The Illusionist)
『エディット・ピアフ ~愛の讃歌~』(La Môme)
『9デイズ』(Bad Company)
『鑑定士と顔のない依頼人』(La migliore offerta)
『ロード・オブ・ウォー』(Lord of War)
『ハンニバル』(Hannibal)
『ハンニバル・ライジング』(Hannibal Rising)
『オーメン』(The Omen)
『KAFKA/迷宮の悪夢』(Kafka)
『レマゲン鉄橋』(The Bridge at Remagen)

by t0maki | 2017-01-17 20:42 | ライフスタイル>映画・書籍 | Comments(0)