5万人の遺骨に囲まれて何を思う?チェコのブルノにある「聖ヤコブ教会の納骨堂」を訪れた

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死を意識することによって、人は生きる意味を見出すのかもしれないね。

「メメント・モリ(memento mori)」って、「みんないつかは死ぬ」って頭では分かっているつもりでも、いきなりこうしてあまりにもおびただしい数の人骨を目の前にすると、改めて「死とは?そして生きるとは?」みたいなことを考えてしまう。壁一面に隙間なく並べられたおびただしい数の頭蓋骨や大腿骨。それぞれひとつひとつが過去に生きていた人間の痕跡であるはずなのだが、次第にそれらが壁面のデザイン的な模様にも見えてきて、僕はなんだか少しクラクラした。

今回、チェコ政府観光局のご招待でチェコ共和国を巡り、チェコ第二の都市であるブルノに到着したのは滞在6日目の12月11日。ノリの良いガイドさんに案内され、ブルノ市内を歩いて回った。教会のすぐ近く、知らなければそのまま通り過ぎそうな何気ない場所に、地下へ通じる階段の小さな入り口があった。

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聖ヤコブ教会の納骨堂(Kostnice u sv. Jakuba)は、ヨーロッパ第2位の規模の地下納骨堂(カタコンベ)である。カタコンベと言えば、有名なのはフランスにあるカタコンブ・ド・パリで、広大な地下空間におよそ600万人分の遺骨が納められている。他にも、イタリアのパレルモにあるカプチン会修道士墓所では、約8000体のミイラ化処理された遺体が安置されており、観光客にも人気のスポットになっている。他にも、オーストリアやスペインなど、有名なカタコンベは世界のあちこちに存在する。人がいるところには確実に死人は出るわけで、そういった場所に墓所ができるのは当たり前のことかもしれないが。

人骨を収めた納骨堂を見学するというのはちょっと抵抗がある人もいるかもしれない。僕もドキドキしながら納骨堂の内部に入っていったが、中に入ってみると想像していたのとは異なり、とても静かで落ち着いた雰囲気の空間だったのでかえって意外だった。確かに、目の前にはむき出しの人骨がびっしりと展示されている。でもそれが全然おどろおどろしい感じではなく、むしろ静謐で厳かな感じ。

1648年まで続いた30年戦争の戦死者や、コレラやペストが大流行した疫病によって亡くなった、5万人以上の遺体がそこに安置されているのにちっとも怖くないどころか、むしろその場に流れるゆるやかな音楽とか、現代アートの展示などがとてもモダンで落ち着いた雰囲気を醸し出してる。不思議な空間だった。
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17世紀につくられ、ヨーロッパ第2位の規模でありながら、このブルノのカタコンベはあまり知られていない。というのも、この納骨所が発見されたのはわずか15年前の2001年のこと。長い歴史の中で一度は忘れられたこの納骨堂が、工事中に偶然見つかったらしい。そして、発掘され、骨を綺麗に処理し、今のような形で一般公開されるようになったのが2012年のこと。

興味本位で訪れるのはあまりお勧めしないけど、僕は多分今後ブルノを訪れる機会があれば、必ずこの場所には立ち寄ると思う。どんな人間もいつかは死ぬ。だとしたら、「今、この瞬間を生きる」っていうのは大事だと思う。そういうことを実感できる場所。


■聖ヤコブ教会の納骨堂(Kostnice u sv. Jakuba)

▼営業時間
午前9:30~午後18:00
月曜定休

▼料金
入場料一般: CZK 140
15歳以下の子供: CZK 70
6歳以下の子供: 無料


by t0maki | 2017-01-04 22:10 | ライフスタイル>旅 | Comments(0)