機内通路を転がってくるパン
2016年 12月 06日
飛行機の通路をコロコロコロと転がってくるものがあって、え?ええっ!と二度見したら、パンだった。
丸いパンが綺麗にまっすぐ転がってきて、僕の席のすぐ横で止まった。
もちろん、僕のパンではない。
誰が落としたのか分からない。
それを拾うべきか、僕はしばらく悩んだ。
それを拾うことによって「あー、君が落としたのか!」と周りの人に思われるのは嫌だった。「あーあ、誰だよパンを落としたのは」とつぶやきなら拾うこともできるが、ターキッシュ航空の国際線に登場しているのは日本人だけではないから、僕は少なくとも日本語の他に英語とトルコ語でも呟かなければならない。しかも間の悪いことに、僕は自分のパンをすでに食べてしまっている。「自分のパンではないけど拾ってあげるんだからね」というアピールができない。
そんな事を考えていると、美しいトルコ人の客室乗務員がスタスタと歩いてきて、落ちているパンを拾った。
その瞬間、目が合った。
「この落としたパンはあなたの?」
「いや、僕のじゃないよ」
僕は、その深い茶色の瞳から目をそらさずに答えた。
「でも、あなたの席の隣よ」
「転がってきたんだ」
「そんなお話が日本にあったわよね」
「でも、おにぎりよりも、丸いパンの方がよく転がる」
彼女は、声を出さずに笑った。
「替わりのパンはいる?」
「だから、僕のはもう食べてしまったんだ」
彼女はゆっくりと屈んで、僕の耳元に唇を近づけてこう言った。
「二つ目のパン、食べてもいいのよ」
✳︎ ✳︎ ✳︎
パンが転がってきたのはホント。
会話は妄想。
というわけで今回は、チェコ政府観光局さんからのご招待で、チェコを巡るブロガーツアーに参加しています。今、イスタンブール空港は朝の5時半。乗り継ぎ便の搭乗時間まで、まだ2時間くらいある。
by t0maki
| 2016-12-06 11:23
| ライフスタイル>旅
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