レストラン学を勉強してるバーテンのお姉さん
2016年 07月 07日
ホテルの隣にある、劇場兼レストラン。
マオリの歌と踊りを鑑賞用しつつ、ディナーヴュッフェも楽しめるようになっている。温泉の地熱で茹でた料理も提供され、まさに観光客が喜びそうなアトラクションである。
それもそのはず、その施設はホテルが建てた観光客専用の劇場スペースなのだから。この町では、いろんなものが観光中心に回っていて、観光客がいかに気持ちよく満足してたくさんのお金を落としていってくれるかということにあらゆる創意工夫をしていて、面白い。
僕自身、埼玉の北の方にある「長瀞」という観光地で育っているので、そういう観光地の裏側的なものにはそれなりに馴染みがある。いわゆる、観光のための「演出」というやつだ。それっぽい由来とご当地の希少性を押し出して、高めの値札を正当化する。観光客は、それをありがたがって買っていくけど、地元の人たちは同じ商品を三分の一の価格で手に入れる方法を知ってる。
ロトルアも、極めて商売上手な観光地だ。ふと気を許すと、財布からお札がするすると飛んでってしまう。でも、それを知っててあえて観光地を楽しむのも悪くない。むしろ、観光旅行をする際は、いかに効率よくそういったアトラクションに参加できるかが、旅行の価値を高めるコツだったりもする。
そんなわけで、僕もその70ドルのエンターテインメントショーに参加した。ニュージーランド航空さんに航空券をいただいて、ロトルアへひとり旅。航空券以外の出費は全て自腹なので、五千円くらいのディナーショーでもそこそこの出費だ。
オフシーズンのせいか、会場は心なしか人が少ない気がする。そこそこの人数は入っているが、空いてるテーブルの数から判断するに、あと三倍くらいのキャパはありそうだ。
「おひとりさま」の僕は、なにかというと批判か皮肉しか言わないアメリカ人家族四人組と、何を言ってるのか言葉が通じないマレーシア人三人組に挟まれて、窮屈にディナーブュッフェを食べていた。
マオリショーは、まあ、それなりに味わい深くて堪能したけど、多分毎日やってると演じる方も飽きるのか、年輩組は「はいはい、今日もやりますよー」的なノリ。ひとりだけ若い人がいて、すごく頑張ってるのが多少浮いててかわいそうだった。ショーのパンフレットには若い憂いを帯びたマウイ女性の写真が使われていたが、実際に踊ってた女性はパンフレットの女性の少なくとも二倍(あるいはもっと?)年を取っていそうな方々ばかりだった。
バーカウンターで、ワインをオーダーした。バーテンは若い女性だった。カウンターの奥で、なにか教科書のようなものを広げてたので「勉強してるの?」って聞いてみた。「マルチタスキングしてます」って言って、ちょっとはにかんだ笑顔を見せてくれた。
「なんの勉強?」
「えーと、これ」
その教科書の表紙には「Restaurant」と書かれてた。
「レストランについて勉強してるのかー。たいへん?」
「資格をとって、ステップアップしなきゃ」
ソーヴィニオン ブラン(ニュージーランドに来てからこればかり飲んでる)をオーダーして、12ドルを渡そうとすると、「9ドルですよ」と言って、10ドル札だけを受け取り、1ドルを返してくれた。
そこは普通だったら「Keep the change」って言うべきとこなんだけど、ニュージーランドはチップの習慣無いしなーとか思って普通にお釣りを受け取ってしまって後でちょっと後悔した。
観光がしっかり産業として根付いてるロトルアで、マオリの可愛らしい女性がきちんと将来の事を考えてレストラン学を学んでるのに感心した。
観光客向けにマオリのコスプレで踊る人もいれば、こうして観光地でのキャリアアップを目指して仕事をしながら勉強する人もいる。現代のマオリ人は、観光資源をうまく活用し生計を立てるために、みんなそれぞれの方法で頑張ってる。
by t0maki
| 2016-07-07 18:30
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