「Genius Bar」へ行ったらまた透明人間になった

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どうやら僕はここに来ると、透明人間になれるらしい。

予約時間の10分前にアップル銀座店に着いた。

「押さなくても良い」って知ってるはずのエレベーターのボタンをつい押してしまって「あ、しまった」と思ったので、照れ隠しにスタッフさんに「Genius Barは何階ですか?」と聞いたら「4階になります。左側のエレベーターですと直通ですので早いですよ」と丁寧に教えてくれた。僕は、「知ってるよ」と思ったけど、声に出しては言わなかった。

エレベーターから降りると、iPadを持ったスタッフの方に、予約時間と名前を伝える。「こちらへどうぞ」と椅子に案内され「順番にお呼びしますので、こちらでお待ちください」と告げられる。で、そこに座って待つ。相変わらず、めっちゃ混んでる。ここにいる人全員ではないけど、かなりの人たちが修理代金1万円とか、端末交換3万円とか料金を払っていくって考えると、確かに絶対壊れない端末を売るより、適度に故障する端末の方が儲かるのかもしれないなぁ、とか思って暗い気持ちになった。

それにしても、待たされる。予約していた時間を過ぎたが、呼ばれる気配はない。席に案内されたときに、スタッフの人がiPadで座った座席の場所を記録しているので、順番が来たら席まで呼びに来てくれるはずなのに。

「オガワさんでいらっしゃいますか?」
「いいえ、違います」

あぁ、またなんか嫌な予感がする。

「スダさんでいらっしゃいますか?」
「いいえ、違います」

これはあれだ、案内したスタッフが座席の記録ミスをしたっぽいな。そうこうしている間に、僕より後に来た客が、先にカウンターで対応を受けてる。いつか誰かが気づくだろうと待っているけど、ここにいる「Genius」たちはみんなそれぞれのカスタマー対応で忙しく、待ちぼうけをくらってるオレなんかに気づく人はいない。僕はひたすら待ち続ける。

忙しそうにカウンター動き回るスタッフ。基本的にタブレット端末を覗き込みながら歩き回ってるので、結構な確率で通路側にいる僕にぶつかってくるけど、誰も僕の存在に気づかない。

「あ、オレは今、透明人間になってる」

* * * 

完全に透明になった僕は、目まぐるしく人が出入るするその「天才」を冠した部屋を見渡しつつ、なんとなくその部屋で人の流れを観察してる。赤ちゃんを抱っこした綺麗なお姉さんは、3万円で2時間後に引き取り。隣にいた後から来たスーツ姿の男性は1万円。おばあちゃんの代理で来たおじいさんは、カウンターに座ったきり延々と何か確認しているけど、多分あなたも3万円コースだよ。

到着してから1時間近くが経過し、そろそろこのまま透明人間になっているのにも飽きたので、近くを通りがかったスタッフを捕まえて声をかけた。たいして怒ってはいないけどイラついている雰囲気を醸し出しつつ「すみません、かなり待っているんですが。僕より後に来た人たちが先に呼ばれているんで、どうなってるんですか?」って伝えると「大変申し訳ありません。スタッフがすぐにご案内します」と、前回と全く同じ返答を聞き、僕の透明人間の時間は終了した。

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今回の故障は、電池がもりもり膨張するっていうもの。画面を押し出して、フレームが歪んで隙間から中の基盤が見えてしまう状態。多分、しばらくすると中からエイリアンが出てくる系のやつだと思う。

「どうしました?」ってサポート対応の担当者さんが質問して、「こんな感じです」って僕が端末を見せると、「あ、はい」みたいな感じですとととんとあっという間に端末交換で、バッテリー代1万円、と。
僕のはち切れた端末はその場でデータを消去され、SIMカードを抜いて箱に入れたあとに「SWELLEN BATTERY(バッテリー膨張)」っていうステッカーを貼られて回収、と。で、僕はまっさらな新品のiPhone 5を手にして、帰宅。
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バッテリー膨張専用の回収ステッカーがあるくらいだから、多分僕と同じ症状の人はたくさんいるんだろうね。ツライよね。

というわけで、いい加減だいぶ使い古したiPhone 5がうっかり新品になっちゃったので、これでまた機種変のタイミングが先送りになったようです。
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とりあえず、この新品の旧機種にも、自作のハミングバード・ステッカーを貼ったところで、そういえば旅立っていった僕の古い端末にもこれと同じステッカーを貼ったままだと気付いた。

あの鳥は、今頃どこを旅してるだろうか。

by t0maki | 2016-06-29 03:14 | Comments(0)