記憶は薄れても、ここに書いた記事は残る

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先日、アルツハイマー病を扱った『STILL ALICE』っていう映画を観て感想を書いたけど、多かれ少なかれ、歳を重ねるごとに、病気じゃなくても記憶や知識は少しずつ確実に失われてくんだよなー、とか思うと切なくなる。

僕の好きな小説で、知的障害者が医学の力で素晴らしい頭脳を手に入れて、ものすごい勢いで頭が良くなるっていうストーリーの作品があるのですね。知ってる人は、タイトル書かなくても分かるだろうけど、ネタバレになるのであえて書かない。
で、その小説の中で一気に天才になった主人公は、知力のピークを迎えると、なす術なく元々の知能レベルに戻ってく、と。

一番最初にその本を原書の英語で読んだ時は、ちょうど僕も留学準備のために英語の勉強をしていて、主人公が知識を手に入れ、文筆力もめきめき向上してくところに共感した。ところが、留学を終えて帰国してから、しばらく英語を使うことができない状態の頃にその同じ本をを再読したら、今度は共感できる部分って、その小説の後半部分。蓄えた知識がどんどん失われてくとこなんだよね。
ちなみに、スペイン語版でも読んでみたことがある。一応僕は大学でアートとスペイン語を学んでて、アートで学位を取ったけど、スペイン語もあと2クラス受講すればそちらもダブル専攻にできるくらいには勉強してました。大学卒業後、ロサンゼルスで仕事をしてた頃も、あえてヒスパニック系の人たちが住んでいる、スペイン語が母国語みたいな地域に下宿してました。

そう、で、スペイン語。すっかり使えなくなっててびっくり。読みはじめても全然意味が入ってこない。スペイン語で簡単な詩を書けるくらいには習得してたはずなのに、今では動詞の活用系もよく分からない。

知識、特に語学は使わないと確実に失われてく。あんなにも苦労して学んだ言語が、あっさりと頭ん中からこぼれ落ちてしまって、学生時代に書いた自分のノートが読めなかったのもかなりショック。

記憶が失われていくのももちろん怖いけど、結局最後は誰でも死を迎える。遅いか早いかの違いはあれど、その終焉は誰も避けることができない。

で、だよ。今の自分を記録しておきたいと思うのですよ。何を見て、何を感じ、何を考えたか。将来、読み返すかもしれない。あるいは、書くだけで読み返すことは無いかも知れない。日々世の中で膨大に生み出される文章やコンテンツの激流をSNSなんかで触れてると、自分がこうして発信してるものなんか、どうでも良いちっぽけなものに感じるし、僕という存在が消えた後に誰かの心に残るなんてのも極めて稀なことなんじゃないかと。

それでも、書く。記憶を形にするために。今の自分を記録しておくために。
Commented by ナポリたん at 2016-02-12 20:51 x
通りすがりで、しかも個人的なことですが、この記事にとても感銘しました。「何を見て、何を感じ、何を考えたか。」、「自分がこうして発信してるものなんか、どうでも良いちっぽけ」という内容に、私は心を打たれました。
「記憶を形にする、今の自分の記録しておく」、とても大事なことであると私も感じています。
当方もサイトを作成していますが、貴殿のように、「記憶を形にする、今の自分の記録しておく」と肝に銘じて、後世に伝えられればなぁとしみじみ感じました。よい記事を有難うございます。
Commented by t0maki at 2016-02-18 16:18
書き残したいものがあるうちは、ずっと書き続けていきたいと思っています。
幸い、書きたいことはまだまだ尽きません。
by t0maki | 2016-02-09 14:22 | 乱文・雑文 | Comments(2)