病院の坂道

 急いで弁当食べて、昼休みに外へ出た。
 もちろん、夏を味わうため。
 
 駒沢通りをブラブラ歩き、写真美術館の脇を抜け、厚生中央病院の前を通った時、「あれ?」と思った。かなり急な上り坂がそこにあったように記憶してたのだが、実際はゆるゆるとなだらかな勾配だったからだ。
 
 何年か前、ソフトボールで怪我をして、僕はこの病院で右足首の靭帯修復手術を受けた。退院後は、ギプスと松葉杖で何度もこの道を往復したのだ。
 とにかく、この上り坂は強烈だった。松葉杖で歩くことに慣れてなかったのもあるが、すぐに腕がパンパンに張って、息が上がってしまう。それでも、「こんにゃろ、こんにゃろ」と自分の体を押し上げ、汗をかきながら少しずつ少しずつ進み、やっとたどり着いた公園で一休み。「治んのかよ?コレ」と、ブヨブヨに腫れ、紫色に変色してた足を見つめてちょっと不安になったり。
 
 その脅威の「心臓破りの坂」も、松葉杖がなければ実はなんでもない、ただのゆるやかな坂だったということ。僕はその坂を一気に駆け上り、公園を素通りして、「どうだ、参ったか」と心の中でつぶやいた。
 なんとなく、ちょっといい気分だった。
by t0maki | 2005-08-11 18:33 | 乱文・雑文 | Comments(0)