時々まだ自分がホワイトホースにいるような錯覚
2014年 05月 20日
日本の温泉に比べたら温度は低いが、それは極端に気候が寒いせいかもしれない。お湯に浸かった身体はそれなりにあったかいけど、外気に晒されてる頭部や髪の毛は冷え切っている。地元では、濡れた髪の毛を凍らせて、誰が一番かを競うコンテストもあるらしい。
『オーロラ王国ブロガー観光大使』として、カナダのホワイトホースを訪れてからしばらく経つが、今でもあの旅のいろんなシーンを突然脈絡なく思い出す。
あの旅の前と後とでは、確実に何かが変わったように感じる。オーロラを見たというのももちろんあるが、もっと自分の深いところで、何がが変わるきっかけになった。美しいものを美しいと感じる心。そしてそれを表現したいと思う気持ち。
思えば、あまりに日常からかけ離れていて、シュールにさえ感じられるような旅だった。真冬の極北の地。気温がマイナス30度を下回り、睫毛が凍りつくのも体感した。午前10時に上った陽の光は、午後4時には沈んでしまう。短い日照時間の最後、夕日がなんと美しいことか。犬ぞりに乗って雪原を走りながら、目の前に広がる極北の大自然が夕焼けに染まってくのを眺めているうちに、自分がそこにいるのにそこにいないかのような感覚に。映画か小説の中に紛れ込んでしまったんじゃないかとさえ。そこで見た夕日の感動は、どんな文章でも、写真でも、伝えられないのがもどかしい。
屋外のスパに浸かっていたら、地元の中学生か高校生か、少女達が嬌声をあげながら一斉に入ってきた。まだ完全に大人にはなっていないが、成熟しつつある艶かしい肢体を子供らしい無邪気さで人目も気にせず露わにしてはしゃいでいるのが眩しくて、目のやり場に困ったよ。
美しい光景だった。多分、天国ってこれに近いイメージなんじゃなかろうかと思うほど。鮮やかでみずみずしい若さと美しさと、それを取り囲むような薄暗い極寒の世界は、強烈に生と死を連想させた。
今でも、僕はふと考える。
あの時、自分の魂の一部がするりと身体を抜け出し、今もまだホワイトホースに留まっているのではないだろうか、と。
ぎゅっと閉じた目をそっとゆっくり開くと、もしかしたらまだ僕はあのユーコンの畔にいるのかもしれない。
いつかまた、ユーコンに立ち昇る朝霧を見に、夜空にオーロラを探しに行きたい。
マイナス30度の世界を経験してから、今年の東京の冬はちっとも寒くなかった。
by t0maki
| 2014-05-20 23:55
| ブロガーイベント
|
Comments(0)