ラクガキ×ラクブン:『推理小説』




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(drawn by TAMKAI)


『推理小説』

「で、被害者のダイイングメッセージにお前の名前があった、と」
「そうそう。いきなり取り調べに呼ばれて参ったよ……」
そう言って、麻生は居酒屋の安いウイスキーを軽く呷った。
オレと麻生は職場は違うが、高校時代からの腐れ縁で、今でもこうしてたまに会う。
麻生は昔、やんちゃだったが、今はすっかり落ち着いて某代理店の営業をしている。

「現場は、お前の指紋だらけだったんだろ?」
「まぁな。直前までそこで一緒に飲んでたし」
「殺害の動機もあった」
「動機っていうか、まぁ、金は借りてた……」
麻生はそろそろ会話に飽きたらしく、ぼんやりと煙草の煙を眺めている。

「でもお前は、無罪だったってことか」
「無罪もなにも、そもそも証拠不十分で起訴もされてねぇし……」

「失礼します」と言って、バイトの女の子が空の皿を下げに来た。
ふくよかなボディに、明らかにサイズが小さいその居酒屋の制服が、かなり窮屈そうに見える。
麻生とオレは、皿を持って立ち去るその後ろ姿の揺れるおしりを無言で凝視し続けた。

「で、ヤッたの?」とオレが聞くと、麻生はおしりから目を離さずに、無言でニヤリと笑った。

(written by TOMAKI)







「ラクガキ×ラクブン」は切り抜きジャックのTAMKAIと、日曜アーティストの工房のTOMAKIとによる共同プロジェクト。

お互いがラクガキを送りあい、そこから勝手に文章(ラクブン)をつけるという、まさに右脳と左脳のコラボレーション。

推理小説って、独特の世界観がありますよね。僕も好きで、よく読みます。
今日は、推理小説っていうタイトルだけど、あえて推理小説とは全く趣が異なる文章を書いてみました。


切り抜きジャック
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by t0maki | 2012-05-27 12:00 | アート>もの書き | Comments(0)