「Webデザイン受発注のコミュニケーション実務」ワークショップに参加してきました

「Webデザイン受発注のコミュニケーション実務」ワークショップに参加してきました_c0060143_1335319.jpg

イマジカデジタルスケープ主催の「Webデザイン受発注のコミュニケーション実務」っていうワークショップに参加してきました。
講師は、「Webデザイン受発注のセオリー デザインコントロールが身につく本」の著者でもある、片山良平さん。

さすが、デザイナー経験をお持ちとのことで、ご自分の体験に基づいた内容の講義は納得の内容でした。
「アートディレクター」の役割は、「クライアント」と「デザイナー」の橋渡しってのは、その通りだと思いました。必要に応じて適切な言葉に「翻訳」しつつ、双方の間に立ってプロジェクトを進める、と。
そのための手段とか、ツールとか、かなり参考になりました。

あえて言わせてもらうと、僕は「プロデューサ」としての立場で仕事をしているので、クライアントのニーズに応えるのも大事ですが、それよりも大切にしなければならないのは「ユーザ」のニーズであり、そのためにユーザ視点でそのクライアントの要求は理にかなっているか、みたいなことも考える必要があるということ。クライアントに言われるまま、クライアントを満足させるためにサイトデザインを作っても、そもそもユーザに受け入れられなかったら、それは案件としては「不発」ですからね。まぁ、それを論じるのは今回のワークショップの趣旨と外れるので、また別問題になりますが。

いろいろ伺った中で、「段階的合意形成」の重要さ、これはホント大事ですよね。
以下、講義の内容とはちょっと外れますが、プロジェクトには二通りあって、ひとつは「サイクル型(スパイラル・モデル)」で、要件を固めて開発を行い、完成したもののフィードバックを受けてさらに改良していく。制作の工程をぐるぐる回る感じなので、サイクルを重ねるにつれて、完成度が高まっていく形。比較的大規模で失敗が許されないシステム開発案件などに多いですよね。もう一つは、「ステップ型(ウォーターフォール・モデル)」。Web制作はこれが多いかも。公開日が決まっている中で、設計、デザイン、コーディング、品質検証などをステップごとに進行していくもの。基本的に、次のステップに進んだ後に、後戻りすることがないようにします。

僕はよく、Web制作の工程を説明する時に、「料理」とか「レストラン」を例えにすることが多いのですが、この場合、「カレー」を作るとして、最初の企画の時点で「どんなカレーにするか」を決めて、それは欧風カレーだったり、チキンカレーだったりするわけですが、その後、材料をそろえて、切ったり下味を付けて、最後に煮込んで、味を見てお客さんに出す、と。全ては、段階を経て作り込まれていくわけです。煮込んだ時点で、「ゴメン、ジャガイモを男爵にしてたけど、キタアカリってのにして」とか言われても、それはかなり厳しいワケですよ。
煮込んでいる途中のジャガイモを全部一つ一つ取り出して、別のジャガイモと差し替える、なんて、絶対やりたくないですよね。でもこれが、Web制作の現場では結構発生しているんですよ……。

そんなとき、「段階的合意形成」が重要となる、と。「キタアカリ」が良いなら、最初の企画・設計段階で決定権のある人を含む形で進めないと。最後の最終確認の段階で、社長に見せたら「全部作り直し」なんてことにならないように、ね。

でも、分かっていても実際はかなり難しいです、この「段階的合意形成」は。社長はOKでも、最後に社長夫人が出てきて全部ダメ出し、なんて話は講義の中でも出てました。自分が経験した案件でも、監修が必要な案件とか、最後の最後にNGくらってあわててデザイン調整とかね。あとは意外と面倒なのが代理店が間に入る案件とか。クライアントの真意を直接確認出来ないまま延々と「伝言ゲーム」を続けたあげく、納品間際に「こんなんじゃない!」みたいな。現場レベルでは「これが最高」と思って作っていても、結局最後に見えない力とか、そもそもの意図みたいなのが新たに出てきて、「ちゃぶ台どーん」みたいな感じで全部ひっくり返ってしまうというのは、制作の現場で働いている方々は、多かれ少なかれ経験あるんじゃないでしょうか?

そんな中、やっぱり思うのは、「ユーザー目線」でサイトを作ることは重要だと思うんです。社長夫人が間に割り込もうとしても、「ユーザーはこれを求めているんです」ってことをきちんとロジカルに伝えられると、横やりが入りそうになっても、大抵は納得してもらえます。もしくは、納得してもらえなかったとしても公開後のユーザーの反応を見て「ホラネ?」みたいな。

最初から「クライアントの意図通りに」「クライアントが指示したから」なんて理由で作っていると、結局この最後のどんでん返しが発生することがあったりします。冷静に第三者の視点で見てみると「やっぱりココおかしいよ」みたいなのが残っていると、最後にやり直ししなければならなくなったり、公開してもユーザーにウケなかったりして案件自体が失敗、と。

つまり、重要なのは、クライアントを満足させるためだけに制作をするんじゃなくて、ユーザーを満足させるためにクライアントと一緒によりよいモノをつくるべきではないかな、と、個人的には思うわけです。経験的にも、それが一番うまくいくようです。

なんて、頭では分かっていても、結局は制作期間や予算の都合で、それなりのものしかつくれなかったりもするのですが、やっぱりそこらへんは理想と現実のギャップがありつつ、でもやっぱり制約の中でもベストなものはつくりたいなと思うわけです。


by t0maki | 2011-11-14 13:06 | 乱文・雑文 | Comments(0)