「マイクロ小説」に久慈誠登場
2005年 04月 24日

第一回テーマ『デジタルエイジのアート』については、22日に配信されました。ここに、作品を転載します。
◇
『通勤列車』
その瞬間、満員電車の車内がほのかに赤く染まった。
窓ガラスのすぐ向こうを、黒煙を上げつつ通り過ぎる火柱。
あまりにリアルな日常の中の非日常的光景を目にし、一瞬車内はどよめいた。
が、それも一瞬の間で、乗客はすぐに元どおり心を閉ざし、それぞれの思索に
落ちていった。
僕もまた、網膜に焼きついたその光景をじっくりと反芻しながら、もの思い
にふける。
公園の……、燃え上がるダンボールハウス。消防士が、ホースを抱えて走る
のを……遠巻きに見守る浮浪者。その顔の汚れは、煤なのか、あるいは路上生
活の垢なのか。血走り、赤く濁った目。
僕には見える、その視線の先にある炎が。
僕は、じっと放心したように公園に立ち尽くし、炎上する自分の住処を呆然
と見つめていた。警笛を鳴らし、通勤列車が通り過ぎて行った。
(完)
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by t0maki
| 2005-04-24 09:55
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