「第2回 東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展」の作品の感想など

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僕が「日曜アーティスト」を名乗る理由は、もちろん日曜に創作活動をしているからなんだけど、「アーティスト」とはちょっと違うんだよなぁという気持ちもあったり。そもそも日本では、「アーティスト=音楽活動をする人」っていうイメージもあったりして。なんだろ。アーティストっていうのは「普通と違う人」、みたいな。

「特別な人」、というイメージなのか、あるいは「普通であることを諦めてしまった人」なのか。

「何かをつくりたい」っていう気持ちは、誰の中にも存在すると思うんですよ。それは、子供がお絵かきを楽しんだり、工作に熱中したりするのと同じこと。創作意欲。
それが、いつの間にかしぼんでいってしまうのは、「こう描くべきだ」とか「巧くつくらなければならない」っていう、気持ちよりも技巧優先になってしまうからじゃないかな。誰もが、プロの料理人を目指す必要はない。カジュアルに自分の周りの人に料理を振舞うような感覚で、作品づくりをしても良いと思う。つくりたいという思いのまま、つくってしまって良いと思うんですよ。そんな意味での、「日曜アーティスト」。

「第2回 東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展 ~私の色、私の形、私の輝き~」を見てきました。
たぶん一般的には、「アウトサイダーアート」とか「アールブリュット」とか呼ばれるカテゴリーの作品。つまり、アート界の本流ではない、障害を持つ特別支援学校の児童生徒がつくった作品、と。

つくりたいという思いがあれば、誰でもつくって良いと思うんですよ。そして、どんどん発表すればよい。
買う側も、自分が気に入った作品を見つけたらどんどん買えば良い。例えそれが、無名の作家のものでも。


「ハニワ星人」という作品は立体の陶芸作品で、鈴になっている。これをつくった人は、視覚障害を持っているとのこと。音で表現する作品。

「鈴鳴り帽子(かぶってみてね)」という作品は、実は展示している間は触ることができないのだが、これもまた視覚障害のある方がつくった、帽子に鈴が付いている作品。ここらへん、本当に触れたら良いのにね。でも、作品としてはみんなが触って壊れたら困るから。

点の集合体で描かれた「ルンデ」という作品を見たとき、アートを知ってる人ならスーラとか、あるいは草間彌生などの名前を出すと思うけど、その比較は実は意味がない。この作品は、この作者だけのものだから。誰かの作風に似ているというコメントは、特にこの作品を見るときには意味が無い。この作品は、この作品だから良いのだ。

なぜだか分からないけど、この作品がすごく好き。「グルグルアリゲーター」っていう、二匹のワニがお互いを噛んで、ぐるぐるなってる絵画作品。色使いとか、構図とか、そのモチーフとか。なんかひきつけられる。なにかしら、物語を感じられるような作品。

「無題」っていうタイトルのコラージュ作品。もともとは、版画作品の版だったって聞きましたが、それがきちんと「作品」という体裁でギャラリーに飾られているところに面白さを感じる。ホワイトキューブをうまく活用して日常にあるモノを作品に昇華したマルセル・デュシャンのように、と、なぜかここでは他のアーティストさんを引き合いに出してみる。

ものの捉え方や表現が面白い、風景画の「松井駅周辺」。ビルや建物の輪郭と、看板の文字と、そこにいる人。たまに、馬なのか何かの動物に乗ってる人がいたりね。

水墨画スタイルの「しいたけ」は、筆をコントロールして描く部分と、墨がにじんでいくハプニングの部分がうまく組み合わさって、面白い作品だ。時として、作者の思いもかけない方向に作品が転がっていくことがある。

陶芸作品の「ライジングフェイス」も、釉薬が交じり合う具合が予測不能な部分なので、前述の作品同様そのハプニングが面白い。僕も、学生時代に陶芸彫刻を専攻していたので、窯を開けて作品を取り出すときのわくわく感はすごく実感として記憶に残ってる。

「水族館の魚たち」
色づかい、構図、そして盛り上がる質感と、勢い。この作品は好きだなぁ。足の数からして、イカなんだろうけど。

かるた「・・・つつみたい。」は、言葉をつかった作品。独特の言葉遣いが面白い。
例えば、こんな言葉たち。
 にわとりをないてしらないこと
 そろばんをつつんでしってること
 まっちをつつんでしりたい
 せみをないてずっとしりたい
 すずめがないてつまないこと
 ろうそくをけしてつつまない
 らくだにのってつつもう
 れいぞうこをあけてつつみたい
 あめをなめてきになる
 わなげをなげてつつみたい
つつみたいという言葉が深いね。

「紙の造形」も、紙を使った面白い作品。パルプ状にしたものを固めて乾かしたのかな?これは、面白い作品がつくれると思うので、こういうワークショップもやりたいな。

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青山アートスクエアでの作品展


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手前に展示されてる、カルタの文面も面白かった。


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独特の言語感覚。


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かぶってみたいけど、かぶっちゃダメ。作者さんはかぶってみてね、って。


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偶発的な墨の滲みが美しい。


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版画の版として作ったものが、作品に。この作品、好きだな。タイトルが『無題』なのも良い。

この作品展は、3月6日まで、伊藤忠青山アートスクエアにて開催されていました。


第2回 東京都立特別支援学校 アートプロジェクト展
~私の色、私の形、私の輝き~
会場: 伊藤忠青山アートスクエア
会期: 2017年2月20日(月)~3月6日(月) 会期中無休
時間: 11:00~19:00
住所: 東京都港区北青山2丁目3-1シーアイプラザB1F
入場料: 無料


by t0maki | 2017-04-23 14:48 | アート | Comments(0)