早口言葉「おあわれみ」が言いにくいのはナゼ?

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「あわれみ」の先頭に「お」をつけると途端に言いにくくなる。
ためしに、「おあわれみ」って早口で10回言ってみて。スムーズに言える?

■まず「おあわ」のア列の連続が言いにくい
「おあわ」という言葉がまず言いにくい。ローマ字で書くとO-A-Waだけど、音的にはつなげるとOUAUWAみたいな感じになるので、「おわわ」とか「おわあ」とかになって、どこで音を切ったら良いか分からなくなる。おーぅあーぅわぁー、おーわーぅあー、うぉーうぁーうぁー。ゾンビか?

■ラ行とマ行の連続も紛らわしい
後ろの二文字「れみ」も意外とトリッキーだ。ラ行とマ行は混同しやすい。「れり」とか「めり」とかね。おあわれり、おあわめり、おああめり、おわあれり、おわまめり。言おうとすれば言うほど、発音のゲシュタルト崩壊。しまいには何が正解なのかすら分からなくなってくる。

■たった5文字が言えないのはなぜ?
たった5文字なのにね。そもそも、「おあわれみ」なんて言葉を使うことなんてないから、言う方もなかなか言葉が頭や舌に定着しない。アナウンサーとか、訓練を受けて練習している人はきちんと言えると思うけど、普通一般の人には難しいよね。そもそもさ、「御憐み」は「おんあわれみ」って読むでしょ。おんあわれみ、おんあわれみ、おんあわれみ……。これなら10回言える。


こういうところで、言葉って面白いなって思うんですよ。文字と文字との連続というよりは、音声学的な音と音とのつながり。学生の時にスペイン語のフォネティクス(音声学・発音学)の勉強をしたことがあって、詩のリズムを理解する時に、発音は日本語のように「あ・い・う・え・お」に近いんだけど、文字の仕組みがひらがなのように文字ごとに分かれているわけではないので、hoyとかhayとかは、「お・い」や「あ・い」の二文字ではなく、「oy」、「ay」の1音なワケ。

例えて言うと、チンピラが発する「おい、こら。ああん?」とメンチを切るセリフは、俳句のように文字数で切る場合は「お・い・こ・ら・あ・あ・ん」の7文字になるけど、音のリズムとしては「Oy-Kor-rah-an」みたいな感じで、4音節にまとめることができる。(ちなみに、この巻き舌の「rr」は、スペイン語の特徴的な発音と同じ。)この音節の切り方が学術的に合ってるかは置いといて、考え方としてはこんな感じ。「あ・り・が・と・う・ご・ざ・い・ま・す」って言うべきところを、音を繋げて「あざっす」って言うとか。言葉を音でとらえる音声学って、面白い。

というわけで、発音の音の区切りは字面の文字とは必ずしも一致せず、繋がったり切れ目がずれたりするんだよ、ってことをおさえつつ、「おあわ」のところって、「Ou-a(u)-wa」みないな音節で連続的に発音してしまうとどこに切れ目がくるのか分かりづらくなるので、頭が混乱して発音しづらくなるんだな。

話ずれるけど、ラップのリズムとリリックって、こういう感じの音で表現するから、あいうえおの文字で歌詞を組み立てるよりも、音節でつくり込んで行った方が結構うまくいく。歌詞を書く人も、字面じゃなくて、音で作詞する方が良いと思う。

とりあえず、「おあわれみ」がなぜ発音しづらいのか、理由は分かっても言えないものは言えないので、おあわれみ、おあわれみ、おわわれみ。……練習します。


by t0maki | 2017-01-20 23:11 | アート>もの書き | Comments(0)