ログキャビンでの晩餐、詩を詠みつつ夜が更けてく

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深夜の太陽の下、
  金鉱探しの男たちによる不思議なできごと。
北極圏へ続く道、
   背筋も凍るような秘密の話。
オーロラはいくつもの奇妙な光景を見守ってきたが、
   なかでもこれは最たるもの。
その夜僕は、ラベルジュ湖のほど近くで、
   サム・マギーを火葬した。

引用元: ROBERT W. SERVICE (1907) "The Cremation of Sam McGee" 冒頭部分抜粋
日本語訳: TOMAKI


ドイツ人夫婦が経営している家庭的なログキャビンのホテルで、二日目に一緒になった家族連れとディナーをご一緒しました。

奥さんは南アフリカ出身の白人女性。旦那さんは、英語に外国のアクセントがあり、なにか事業で成功した方っていう印象。二人の子供(と言っても長男は社会人、長女は学生さん)がいて、こちらはすごく流ちょうでていねいな英語。すごく感じの良い家族で、育ちの良さというか、全体的に上品な感じ。会話の内容も政治や芸術についてなど、なんとも「紳士・淑女の晩餐」といった雰囲気で、ユーコンのビールを飲みながらウッドキャビンでそんな会話に加われたのが愉快で仕方がなかった。

「アベノミクスどう思う?」っていうフリに、「うん、そうだね。効果は上がっているとおもうよ、ハハハ」なんて普段日本語でもしたこともないような会話に冷や汗かきながら英語で受け答えしつつ……。「ブログ書いてる」っていう話をしたら、そこから話題はユーコン ホワイトホースゆかりの文学の話題に。作家のジャック・ロンドンは有名で、ホワイトホースのメインストリートに銅像が建ってるくらいですが、他にもロバート W. サービスっていう詩人も作品がよく知られています。特に、『The Cremation of Sam McGee(サム・マギーの火葬)』っていう詩はユーコンを舞台にした有名な詩。
息子さんがこの詩をiPhoneで検索して、朗読しはじめました。

There are strange things done in the midnight sun
  By the men who moil for gold;
The Arctic trails have their secret tales
  That would make your blood run cold;
The Northern Lights have seen queer sights,
  But the queerest they ever did see
Was that night on the marge of Lake Lebarge
  I cremated Sam McGee.

引用元: ROBERT W. SERVICE (1907) "The Cremation of Sam McGee" 冒頭部分抜粋(原文)


実際には、このあとも詩は続くのですが、内容は金を探して極寒のユーコンに足を踏み入れた二人。あまりの寒さに、一人の男が「俺が死んだら火葬してくれ」って遺言に残し、死んでしまう。残された男は遺体を運び、火葬にするが……っていうストーリーの詩。
海外の詩って、なかなか翻訳するの難しいよね。意味は訳すことができても、詩ならではの音の流れ、リズムや韻なんかは訳せない。むしろ、詩ならではの音重視で訳したらどうなんだろう。とりあえず、冒頭の訳詩をしてみたけど、こんどリズムも含めてもう一回やってみようかな。

「サム・マギーの火葬」のストーリーはもちろん詩の中のフィクションだけど、実際の「サム・マギーのキャビン(SAM McGEE'S ORIGINAL CABIN)」はホワイトホースのマクブライト博物館に展示されています(冒頭の写真)。
これは、当時銀行員だった作者のロバート W. サービスが、銀行の帳簿から「サム・マギー」の名前を拝借したため。実際のサム・マギーはテネシー出身じゃないし、もちろん湖の畔で火葬もされてません。まさか作者も、その詩を書いた時はこんなにも後世にまで渡って有名になるとは思ってなかったんじゃないでしょうかね?

今回、『オーロラ王国ブロガー観光大使』として、ユーコン準州 ホワイトホースへ訪れたことがきっかけで、ここを舞台にした小説や映画などの作品を愉しみながら味わっています。事前に読んだのもあるし、帰ってきてから改めて探して読んでいるもの。

ユーコンにちなんだ作品は、まだまだ他にもいろいろあるので、こんどまとめてご紹介します。

■ 『オーロラ王国ブロガー観光大使』記事まとめ
■ 「オーロラ王国ブロガー観光大使」 カナダ観光局公式ウェブサイト
 
 
by t0maki | 2013-12-27 06:00 | ブロガーイベント | Comments(0)